安西水丸 展

160621
 何かと家にこもりがちな梅雨時である。
思い切って東京駅から新幹線こだまに飛び乗り、京都伊勢丹で開催中の「安西水丸展」へ出かけた。
 僕は安西水丸さん大ファンなので、これまでにもたくさん水丸さんの絵を見てきたつもりだったのだが、今展ではまだ見たことがない原画や、かつて夢中になって読んだ本の版下もたくさん出ていた。
 その線やカラートーンの息遣いを間近に感じると、勇気付けられ、フレッシュな気分になる。亡くなられてから3年が過ぎようとしても未だに故人を偲ぶような気分が起こらないのはこのためだろう。
 会場では、盟友・嵐山光三郎さんのトークライブをやっており、こちらを拝聴するのも今回わざわざ京都まで来た目的の一つだ。
 嵐山さんは水丸さんとの思い出話を避け、もう少し俯瞰から見えざる天然の采配について話されているようだった。
 つまり人間の「運」の話だ。例えば勝負事であれば連勝の後には必ず負けが、連敗の後にも必ず勝機がやって来る。人間の運の総量というのは皆平等に持ち合わせており、大事なのは「運」がやって来たら全力で掴むこと、そのための気力を横溢させ準備しておくこと。そんな内容だった。
 何故かふと水丸さんがいつもパレットで言っていたことを思い出した。どんな友人と出会うかでその人の人生は決まる。水丸さんの場合、キーパーソンとなる嵐山さんとの出会いが道をつくり、村上春樹さんとの出会いが更に道を広げてくれたと。
「運」という非情な波を引き寄せて、そこに才気溢れる若者たちが集ったのだろうか。
僕の中でそんなイメージが浮かび、「カッコイイなあ」と心のなかで呟いた。

イラストレーター 安西水丸 展 美術館えき 京都