ROOM

160411
「テレビの中の人は本物?」
「みんなって誰のこと?」
"部屋"しか世界を知らなこどもの言葉の一つ一つの重みが凄い。
 映画「ROOM」は、1人の少女が"部屋"に拉致監禁されて7年目、そこで妊娠出産をして生まれた男の子ジャックが5歳の誕生日を迎えるところから物語が始まる。
 
 映画は主に映像を体感する芸術だという観方をする僕にとって、この映画の真髄はみずみずしい感受性を持って成長していくジャックの視点だ。
唯一の天窓から眺める空、雲、雨、本物の葉っぱ。
"部屋"の中の箪笥や折りたたみ椅子、おもちゃの卵へび。
あらゆるものがジャックの視点から愛おしいものとして描かれている。
普段当たり前にあると思っていたものの美しさと不思議さをジャックに教わったわけだ。

 やがて、"部屋"を出て大空を初めて見た時の驚き。
ああ、素晴らしい。
この世界は素晴らしい。
僕もこどものころ、初めて見た海や電車やマンションに感動したのだった。

 物語の結末で"部屋"を触れてはいけない憎悪の対象としてではなく、彼にとっての故郷、まるで胎盤のようなものとして描いているのも良かった。
"部屋"で過ごした時間、そこにあった物たちを確かにあった過去として捉えているのだ。
もちろん拉致監禁は日本でも深刻な社会問題であり、絶対にあってはならないことで、そこで当人が過ごした時間と空間をどう捉えるべきかは、まだまだ安易に発言できないところだ。
この映画では、その隔離された"部屋"の中であっても母親は子どもの健康状態に気を配り、前向きに教育していた。
そんな母親の勝利のストーリという観方もできるということを付け加えたい。