パターソン

170818
 一般試写会の招待を頂いたので渋谷のユーロライブで「パターソン」を観てきた。
 ニュージャージー州パターソンのバスの運転手で詩を書くことを愛好しているパターソン(主人公は住んでいる街と同じ名前なの)の一週間にわたる日常が描かれている。
 妻と愛犬と三人で、滝が見晴らせる公園くらいしか名所がない田舎町に住んでいる。その生活は絵に描いたように平凡でもある。
 でもよく見ると何か素敵に見えてくる。
 妻は料理が下手だったり、朝寝坊したり、犬の散歩に行かなかったりして天然なところもあるけど、夫が好きで彼の才能をよく理解している。
そして夫も妻のことを「There'll never be anyone like you 」と詩の中に綴っていた。
 赤レンガ造りの古いバス車庫の建物も立派で、毎朝決まった時間にランチボックスを手に下げて紺色の仕事着で出社するパターソンのスタイルはどちらかと言えば日本人的な真面目さがあり、シンプルで美しい。バスの運転中にも乗客の会話に耳をそばだたせ、控えめに微笑むところに優しさがにじみ出ていた。
 物語の終盤で永瀬正敏演じる日本人旅行者と語らう場面がある。その旅人は詩集「パターソン」を大事に持ち、敬愛する詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズが見たものを見たくてニュージャージー州パターソンへやって来たのだという。こうゆう旅の仕方はすごく羨ましい。彼はパターソンに新しい白いノートをプレゼントし去っていった。
170822
 僕を含めて大抵の人は月曜から金曜まで仕事に出かけて働いて土日に休んでまた月曜の朝から仕事に出かけるといった日常を過ごしていると思う。これじゃ毎日同じことの繰り返しじゃないかと辟易する。ところが良く見ると同じ時間なんてこの世に二つと存在しないとも言える。 もしかしたら、この真理の中で日常の差異をうまく捉えられる者が詩人なのかもしれない。