リリーのすべて

160327
 その乗り物は機能性の観点で2種類に分類できる。男と女だ。
でも乗り物の操縦士には様々なタイプがあるような気がしている。
男の乗り物には男性性が強いタイプが、女の乗り物には女性性が強いタイプが乗りこなしていることが多い。
たまに男の乗り物を女性性の強いタイプが操縦しなきゃならないケースもある。逆もまたある。

 公開中の映画「リリーのすべて」を観て、そんなことをはじめて思った。
この作品は、1920年代に世界で初めて性的適合手術をうけたデンマーク人とその妻の夫婦の物語である。
 当時はトランスジェンダーとか性同一性障害なんて言葉も概念もない。
映画によると、こういった人はただ精神分裂症と判断され、病棟に隔離されたり、台の上に縛り付けられ放射線治療をされたりしていたようだ。
これが、どこまで史実かわからないけど、トランスジェンダーのつらい歴史を見た。

主役の俳優エディ・レッドメインが男性として生まれながらも心は女性であることに悩み戸惑う様子を本当にうまく表現している。
妻役のアリシア・ヴィキャンデルは夫を理解し性的適合手術に協力する苦しみや悲しみを抑えた感じで演じていて、心に響く演技だった。

 以前は僕もオネェ系やオカマのテレビタレントを差別こそないがどこか奇異な目で見ていたが、今では、心の性というものには人それぞれ複雑なものがあるので、むしろその差異は理解できるし楽しめると思った。