ブルックリン

160802
 「碧い瞳の外人さん」。外国人を初めて見た日本人はそのブルーの瞳に驚嘆し、以来この表現は外国人を形容する常套句のようになった。ところが、一口に外国人と言っても千差万別、今では外国人自体が取り立てて珍しくもないからか、今時こんな言い方も古いのかもしれない。そんななか、アイルランド人の女優シアーシャ・ローナンは「碧い瞳の女優さん」と敬意を込めて呼びたくなるような昨今珍しい映画スターではないだろうか。
 公開中の映画「ブルックリン」を観に日比谷のシャンテに出かけた。これは一人の女性が閉鎖的なアイルランドの片田舎から新天地ニューヨークへと旅立ち、成長してゆく物語だ。この映画は特に地方出身で上京して頑張っている(頑張っていた)女性が観ると、共感できる部分が多々あるのではないでしょうか。主人公のアイリーシュは昼はデパート販売員の仕事を、夜は夜間学校に通い将来は簿記の仕事を目指しているという。どこにでもいそうな普通の女の子だがその瞳には明るい未来が映っているようだ。上京したての頃はホームシックに泣き濡れていた彼女も、時間が経つとともに都会に馴染み垢抜けてゆく様子が素晴らしい。

 作中僕が特に関心したのが、物語の後半部分、一時帰国して二つの人生の岐路で迷っているアイリーシュが地元の売店の意地悪ババアに嫌味を言われる場面だ。本当に嫌みったらしいババアなのだが、その嫌味のおかげでアイリーシュは自分の本来の気持ちに気付かされる。すなわちここから一つの教訓が得られた。人生の局面で出会う嫌なやつのおかげで思いもよらず道が切り開かれることもあるのだ。