smoke-デジタルリマスター

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 デジタル・リマスタリングされた「smoke」を名画座のキネカ大森で観てきた。
この作品は90年代のニューヨーク・ブルックリンが舞台ということで、ブルックリンプロムナードを散歩するシーンでは、背後のマンハッタン島にちゃんとツインタワーが写っていて、泣けてくる。
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 ブルックリンといえば今ではおしゃれスポットなどといわれてメディアでよく特集されたりもするけど、90年代にはまだ観光で行く人は滅多にいなかったんじゃないだろうか。ハービー・カイテル演じるオーギーが経営するタバコ屋のような雰囲気のある個人経営のお店がいろいろあった時代だ。あまり働いていないような人たちがそこに集まってきて、タバコを吸いながらだべって野球の話だとか、政治の話をしている。これはまあ落語で言うところの長屋の与太話といった感じで、みんなバンカラなところがいい。

 
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 作品のテーマとは少し違うのかもしれないが、この映画では男の友情のようなものがさりげなく描かれているところが気に入っている。タバコ屋のオーギーと小説家のポールと黒人青年のラシードの関係は、例えばオーギーが毎日同じ時刻に撮り続けているという写真にポールが触発され、再び小説を書く意欲をもらったり、ポールは命を救ってくれたラシードを息子のように可愛がり、オーギーの店に就職できるように世話してあげたりしていた。地位や名声とは無関係にお互いを尊重する気持ちはやはりいいものだ。その気持があれば新しいストーリーが動き出してゆくことをこの映画は提示しているようにも思える。