The Big Short

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 経済オンチ、マネーゲームにもとんと縁がない僕だが、お金って何だろうって考えることが結構好きだ。

 人生の初期の頃、お金とは労働の対価として得られるご褒美のようなものだと教わったような気がする。
一生懸命働けば、お金を貰えてそれで好きなモノが買えると理解した。
これはこれで極めてまっとうで、むしろ余計なことを考えずこの原則を盲信していれば人生間違いないはずだ。

 ところが、僕が小学校4・5年生のある日、祖父母から貰ったお年玉を大事にしていると、母親がそれを見て、郵便局に預けたらとアドバイスしてくれた。
 僕はバカだから、なるほど郵便局というのは人々の金をただで保管してくれるのか、ありがたいものだと感心して生まれ初めて通帳というものを作りに行ったわけだ。その通帳を眺めては、僕は何だか金持ちになったようないい気分でニンマリして日々を過ごした。程なくしたある日、すごいことを発見してしまったのだ。なんと預けた金が少し増えているではないか。(当時は金利がものすごく良かった)
 自分の目を疑い、母に聞いてみると「郵便局がお金を増やしてくれたんだね」と言った。
 少年は理解に苦しんだ。郵便局とはただで金を預かってくれてそのうえ金を増やしてくれるのだ。こっちは、つまり働いてもいなのに金を得たことになる。

 これが僕の経済における愛憎半ばする原体験で、この日以来、金に対する迷いはますます深まり今日に至っている。


 金つながりの話だが、公開中の映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を見た。
 いわゆるリーマン・ショックの舞台裏を描いた実話で聞き慣れぬ経済用語が劇中連呼されるが、グイグイ行くテンポのよさ、アメリカっぽい映像のカッコ良さ、何より登場人物たちのキャラが際立っており経済オンチにも十分楽しめた。
主人公クリスチャン・ベイル演じるトレーダーのマイケル・バーリはサブプライム・ローンのインチキをいち早く見抜き、AAAの誰もが安定性を信じて疑わない証券にCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)というやり方で、つまりAAAの証券が破綻するという商品に投資をしていくのだ。ウォール街のエリートたちは、破綻するわけがないAAAの証券に多額の保険金を払ってくれる変人が現れたといわんばかりに嘲笑を浴びせるのだが、結果がどうなるかはもうみなさん知っての通りだ。
 単なる逆転劇というだけじゃなく、自分の一念で多くの人の金を投資する人のストレスのようなものも描かれていて、返す返すも僕はそっち方面の職業だけは勘弁だなと思った。

 この作品から得られる教訓は
  ・みんなが同じ方向に向かって進んでいるときは要注意だ
  ・いかなる場合も格付やランキング類を信用してはいけない。

 なお、マイケル・バーリは今も一点買いのトレーダーとしてNYでファンドをやっているそうだが、その彼が今投資している商品が何なのか映画のエンディングで語られる。それを見て僕はどうゆうわけが合点がいった。