「三度目の殺人」「彼女がその名を知らない鳥たち」

 この二作品を観て、ここに出ている役者というのは芝居で食べているだけあってどの俳優も皆うまいもんだなあとあたりまえの感想を抱いて早稲田松竹の劇場を後にした。

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 「三度目」では咲江を演じていた広瀬すずが意外に存在感があって、もしかしたらこの娘が事件の黒幕なのかもしれないと、うつろな表情にゾクッとしてしまった。真実というのは一体どこにあるのだろうか。殺人事件の真相は容疑者、被害者の家族、弁護士の三者の立場によってまったく異なったものになってゆく。最後の結末は不気味な容疑者三隅の狙い通りになったようにも見えるが違うようにも見える。落とし所をはっきりさせたい人にはこの映画は歯がゆいだろう。福山雅治と広瀬すずと役所広司が雪の中で遊ぶシーンが好きだ。

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 「彼女が」は普段ナチュラル系で清純なイメージが売りの蒼井優にそれと真反対の役をあてた白石数彌監督の演出が素晴らしい。怖いもの見たさと同じでダメなやつ見たさとでも言おうか、大いに刺激された。男の稼ぎに頼って働きもせず遊んで暮らす十和子にも、それをゾンビのように追いかけ回す陣二にも、二人がなぜそのような関係を続けているのか最後に明らかになる。こうゆう人たちを品行方正に躾けてしまうと物語がストップしてしまう。極論だが、まっとうな人間が至極まっとうなことを言っていたとする。しかし、そんなのはちっとも面白くない。それだったら、どうしょうもない落ちぶれた人間がどうしょうもない屁理屈をとても魅力的に語っていれば、かえって心に響くこともあるのだと教えられた。