サイ・トゥオンブリーの写真展

 
160502
 まれに、この絵は子どもの落書きなんじゃないかと言われるような美術があるが、こうゆうタイプの作品の良さを人に説明するのは難しい。
 そもそも説明すればするほど本質が逃げてしまうような気もする。僕たちの日常生活には、技術が優れていたり、役に立ったり、見栄えがよかったりするものを当たり前に良しとしてしまっているが、それとは別のところで何だかわからないけど理屈を超えた良い物もある。


 前置きが長くなった。
 先週末、サイ・トゥオンブリーの写真-変奏のリリシズム-という展覧会を見に千葉の川村記念美術館へ行ってきました。
 惜しくも2011年この世を去ったサイ・トォンブリーはまさに前段で述べた子どもの落描きのような絵画をたくさん制作したアメリカ人アーティストだ。生前はイタリアにアトリエを構え、ドローイング、ペインティング、彫刻と様々な領域をクロスオーバーしながら20世紀を駆け抜けた。

 とりわけサイ・トォンブリーの写真のまとまった展覧会は日本初なので、僕はこれを機会に氏のものの見方の秘密に少しでも近づきたいと期待した。

 八百屋の店先に積まれたキャベツの山やピンぼけしたチューリップの写真を見る。色が滲んだような花の写真を見る。
 ほとんどの写真がイタリアで撮られたものだろうか?古典的でもありロマンチックなイメージで何だかうまく言えないけどたまらなく良いのだ。
 展示作品はほぼ年代順に並んでおりその時間幅は50年にも及ぶが、全体に通じる一貫性がこの作家の生涯に生み出した様々な作品とも互いに呼応するかのように見えるのが面白い。

 実に興味の尽きないアーティストで、これからも見られる機会があるものは、そのすべてを見てみたいと思う。

サイ・トゥオンブリーの写真-変奏のリリシズムは川村記念美術館で8月28日まで