ベイビー・ドライバー

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 音楽のスイッチをオンにすると天才的なドライビングテクニックを発揮する通称ベイビーは、その才能を犯罪組織のボスに買われ強盗の逃がし屋で稼いでいる。ノリの良い音楽に合わせてアクセルを踏みハンドルを切るカーチェイスシーンが評判の「ベイビードライバー」は素直にわかりやすい娯楽映画だ。コンピュータグラフィックスは使用せず、正真正銘のリアルカーアクションに挑戦している。難しいことは考えず、ぜひとも自分の目で、耳で、ハートで感じるべきだろう。
 見どころはカーチェイスだけではない。映画の始まりでベイビーが音楽のリズムに合わせて街を闊歩しながらコーヒーを買いに行く長まわしのワンカットがそのまま作品のオープニングタイトルになっている仕掛けは、美しい表紙の本を手にとって物語を読み始めるときのわくわく感に似ている。古い感じのアメリカンダイナーやジュークボックス、主人公がアナログLPやカセットで音楽を楽しんでいるところもオールドアメリカフリークを安心させる。
 本作のエドガー・ライト監督は現在43歳のイギリス人だそうだ。僕と近い世代だから、きっと子供の頃夢中になって観たアメリカ映画の影響を強く受けているのではないだろうか。このあたりに非常に共感が持てる。よく日本人よりも日本人らしい外国人がいるように、アメリカ人よりもアメリカが好きなイギリス人が映画を作るとこんな映画が誕生するのかもしれない。
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 その一方で、主演俳優のアンセル・エルゴートやヒロインのリリー・ジェームズは二人共まだ20代と若く、僕にこれくらいの年齢の子どもがいても何らおかしくない。今時の若者らしく小顔で異様に手足が長い二人が音楽について話し合ったり、イヤフォンをシェアして一台のiPodで音楽を聞くコインランドリーでの場面はとても初々しい。映画スタッフも役者もいよいよ新しい人が出てきたという感じがして、こっちもうかうかしてはいられない。