ラ・ラ・ランド

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 ミュージカルが嫌いな人は沢山いるが、その理由はピストルで撃たれて急に踊りだしたり、喜びの表現を一斉に皆で歌ったりすることが馬鹿馬鹿しいといったものだろう。

 僕は舞台で本物のミュージカルを観たことがないから何とも言えないが、歌舞伎なんかも荒唐無稽な芝居だが逆にそこが魅力で観始めると結構ハマってしまう。なのでミュージカルももしかしたら好きなのかもしれない。

 ミュージカル仕立ての新作映画「ラ・ラ・ランド」を封切りで見に行った。

 出だしの長回しの1カットを観ただけで、この作品に携わる人々の情熱に圧倒されてしまった。
心のメタファーとしてのミュージカル。音楽が鳴り響けば自然とステップを踏んてしまう、科学では解明できない魂がある。
「多くを語るよりこの1カットを観よ」だ。

170614
 序盤と中盤では夢追い人の二人が出会い日々を重ねてゆくエピソードで美しく構成されている。ロケーションはたぶんロサンゼルスという街に縁のある人なら誰でも知っているデートスポットで東京で言えば浅草寺とか井の頭公園とか千鳥ヶ淵あたりだろうか。あらゆる映画文法を駆使して映画遺産へオマージュのようなシーンが思い出のように大切に撮られている。どこを切り取っても魅力的な映像だが、ここで終わっていたらただの優等生映画に終止していた。ところが、そのシークエンスの数々が後半の仕掛けで一気にフラッシュバックされて、4次元的な奥行きを醸し出しだす。絶品の編集だ。ハッピーなだけじゃなくて、ちょっぴりほろ苦いエンディングを用意したことも後を引く。それにしてもエマ・ストーンのあの一度見たら忘れなれない顔は何なのだろうか、とても気になる女優だ。